2013年7月31日水曜日

Fw: 忘れられた国キューバ from「ガツンと一発」

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>平成25年('13)7月31日 第1875号
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>忘れられた国キューバ
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>平井修一
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>自由民主主義者のフィデル・カストロがバチスタ政権打倒を目指して最初の武装蜂起をしたのはちょうど60年前の1953年7月26日だった。失敗して彼も投獄され、裁判を受けたが、非公開裁判でこう主張した。「私を断罪せよ。それは問題でない。歴史は私に無罪を宣告するであろう」
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>それから60年、1959年のカストロ政権成立、キューバ革命成功からは54年である。歴史はカストロをどう評価しているのだろう。
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>キューバは本州の約半分の面積に1125万人が暮らしている。2011年の1人当たりのGDP(USドル)は186ヶ国中95位の5107ドル(約50万円)。13位の日本(12年)の4万6735ドル(約460万円)の9分の1であり、貧困ではなく飢えもないが、かつかつの暮らしだろう。
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>主要産業は観光業、農林水産業(砂糖、タバコ、魚介類)、エネルギー・鉱業(石油、ニッケル等)、医療・バイオ産業で、基本的には第一次産業が中心だ。経済成長率2.8%(2011年)で、ベースが小さいから暮らしが上向いている実感はないだろう。
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>カストロは老いた。2008年にカストロは国家評議会議長(国家元首)を辞し、ナンバー2である弟のラウル・カストロが後継に就任した。
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><ラウルは就任早々、危機的状態が続く経済を再建するため規制緩和を次々打ち出し、2011年4月には市場経済が部分的に導入されることが決まった。食料配給の段階的廃止、不動産の所有権と売買を認める等、大きな改革が5年以内に実施される。同年秋にはタバコの配給が停止、禁止されていた自動車売買の自由化、住宅の売買も解禁された。
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>人件費支払いが困難なため、2012年3月までに公務員の50万人のレイオフも行われる。失業者の受け皿として自営業の免許を25万人分発行することが決まった。現在の労働者は公務員約470万人、民間労働者約60万人(大半が農家)、自営業14万人である>(ウィキ)
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>キューバ経済が成長しないのは"北の巨人"米国による経済制裁が大きく影響しているためである。カストロが全権を掌握すると米国は直ちにこれを承認した。しかし、共産主義と一線を画し、むしろ嫌っていたカストロの新政府が土地の国有化=農地解放を推進し、米国など外国企業の資産没収と国有化も実施するという「社会主義的」政策を進めると、米国との関係は悪化した。
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>その隙を狙ってソ連がキューバ支援を強化していき、結果的にキューバはソ連依存を深め、そのために米国による経済制裁は半世紀も緩められることはなかった。タニマチのソ連が1991年に崩壊するとキューバ経済は低迷を余儀なくされた。
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>近年、米・キューバ関係はやや改善の兆しがあるようだ。
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><米国においてもオバマ大統領就任後、対キューバ政策に変化が見られます。2009年4月、オバマ大統領はキューバ系米国人のキューバへの渡航制限と送金制限の撤廃、米企業のキューバ通信事業参入などを含む緩和措置を指示し、同年9月には実施に移されました。これに対し、ラウル・カストロ議長は「あらゆる課題に対し米国と対話の用意がある」と表明、これからの米国とキューバの関係改善に注目が集まっています>(外務省)
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>蝸牛の歩みを続けるキューバ経済の現状を国民はどう見ているのだろう。ブログ「Generation Y」は、「永遠に続くデジャヴ(既視感)にとらわれているようだ」とこう語っている。
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><隣人は20年前とほぼ変わらない問題に頭を抱えている。肉屋の前の長い列は1994年や2002年と変わらない。前にも同じ状況を見たことがあるように感じざるを得ない。市場で慢性的に不足した食べ物や日用品を求める姿は、何度も繰り返される光景の一つだ。人々は、わずかばかりの油、ソーセージ、洗濯用せっけんを買い求めている>
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>生活必需品に不自由する状態が20年間も続いているのだ。米国へ亡命する国民が後を絶たないのも頷ける。ニューズウィークはこう分析している。
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><まず確認しておこう。キューバ共産党はこう宣言している。キューバの社会主義制度が「変わることはない」。
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>だがラウル・カストロが進める経済改革によって市場原理が導入され、多くの人々が戸惑いを見せている。正直、キューバがどんな経済モデルをつくろうとしているのか分からなくなっている。
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>キューバ政府は私企業は認めても、自由民主主義を認めるつもりはないようだ。ハバナ大学の経済学者フリオ・バスケスは断言する。「キューバは中国やベトナムなど、経済の急速な成長のおかげで一党独裁を維持している国を模倣することはあり得ない。経済の根本的な構造改革が必要だという認識はあるが、旧体制の考え方は根強い。起業家を規制することばかり考えている」
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>08年にラウルが議長に就任して以降、民間企業により大きな役割を与える政策が導入されてきた。自営業許可証を取得した人は40万人近い。政府は農作物の増産を狙って、約1万2000平方キロの国有地を長期にわたって無償で自営農や独立系協同組合に貸し出している。都市部はレストランや軽食店が軒を並べ、にぎやかになった。住宅やアパートの売買も約半世紀ぶりに許可された。
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>しかし共産党指導者や官僚組織は、中国やベトナムが何十年も前に捨て去ったソ連式の教条主義にしがみついている。
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>ディアス・バスケスによれば、中国やベトナムは高い生産性を重視し、企業家や専門家が成長を奨励している点がキューバとは大きく違う。外国投資も導入され、輸出業の発展で世界経済の重要な一員になっている。国民の生活水準は向上し、それが政治の安定にもつながっている。両国の政府は個人が裕福になることを妨げてはいない。しかし、キューバではいまだに金儲けは犯罪だと思われている。
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>ラウルの改革後も政府は自営業者を厳しく規制しているとバスケスは言う。「商売を始めてもいいが、いつでもやめさせられるという姿勢だ」
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>キューバでは今も国民の80%近くが政府や国営企業で働いている。平均月収は約20ドルで、生活の基本的ニーズを賄うのも難しい。多くの人が職場から物を盗んだり、大規模な闇市で物を売買してしのいでいる。
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>こうした障害の根底にあるのは1960年代からまったく変わらない経済モデルだ。外資の誘致も秘密裏にしか行えない。この経済モデルはとうの昔に立ち行かなくなっていた。現在の経済生産では、フィデル・カストロが59年に成し遂げた革命の成果とたたえられた医療や教育の制度を維持することも不可能だ。そのことを認めたのは、弟ラウルの時代になってからだ。
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>「急がず、たゆまず」とラウルは言うが、キューバの変化はあまりに遅い。80代になった指導者たちに残された時間は少ない>(2012年9月26日)
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>ソ連に代わって登場したタニマチはベネズエラのチャベス大統領だった。チャベスがキューバに多額の現金とエネルギー需要の3分の2を提供しているから、キューバは変革を急ぐ必要を感じなかったのだ。チャベスは強烈な個性でベネズエラの政治をリードしてきたが、そのチャベスも2013年3月に死去した。
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>チャベス亡きあともベネズエラが財政支援を続ける限り、キューバの指導者たちは中国型の改革は行わず、独自の共産主義体制をできるだけ長く守り続けるつもりだろうが、チャベス死後のベネズエラの政局は不明であり、キューバの未来も同じく不明である。キューバの「再革命」は意外に近いのかもしれない。
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>フィデル・カストロに歴史はどんな宣告をするか。ソ連が崩壊した時点で経済改革、米国との関係改善に舵を切るべきではなかったのか。「不作為の罪」で執行猶予つきではあるが有罪を免れないのではないか。(2013/07/30)
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