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>官邸お庭番日誌ver2 第21号
>2012年1月30日
> 第180通常国会が開会された。1月24日から6月21日までの150日間の会期であるが、どんな展開を示していくのか、まったく展開が読めない。もちろん、野田総理が最も力を入れているのが、社会保障・税一体改革素案の法案の成立であり、遅くとも3月末までには法案として提出することにしている。問題は与野党協議に入れるのかどうか、であるが、今のところ協議に入ることは難しそうである。ただ、公明党側から年金改革の一元化の姿を提示すれば与野党協議に入っても良いかのようなボールが投げかけられ、それに対して岡田副総理も与野党協議に入ることができるなら、すでに民主党側が、来年の通常国会までに完全一元化法案を提出す
ることを表明しているだけに、完全一元化案を提示していくことの可能性をにおわされ、そのことが党内外に波紋を呼び、また新たな火種になって民主党政権に重くのしかかってきつつある。
>□年金完全一元化の具体案は、2004年以来ポンチエのままだ
> 年金問題の完全一元化こそは、09年マニフェストのはるか以前の04年参議院選挙から民主党として国民に提示していた政策であり、その具体的な姿を明確にすることは、公党としての義務であることは間違いない。問題はそのタイミングであり、まずは一体改革素案についての法案化を急ぎ、その成立後に年金の一元化案を整理していこうとしていたのであろう。そんな民主党側のタイミングを野党側が待ってくれるかどうか、という問題であり、すでに野田政権に対して解散・総選挙を迫っている局面で、この年金問題にどう対処していくべきなのか、まさに政局の帰趨を決めるような問題なのだと思う。今週から始まるであろう予算委員会での一問一答
の質疑の中で、政府側として与野党協議の進展との兼ね合いでどのような対応をしていくことにするのか、注目すべきポイントの一つである。
>□年金完全一元化案は、フィージビリティがあるのか検証を
> この年金についての民主党が主張している内容の詳細が『日経ビジネス』1月23日号にすっぱ抜かれ、朝日新聞も1月26日付の朝刊で「年金試算 波乱の芽」と題して同じものを掲載している。民主党の年金一元化案は、被用者年金の一元化だけでなく、自営業や農家など国民年金も含めて所得比例(保険料率は15%)で年金水準が決まり、所得の低い層には最低7万円の最低保障年金を給付していくこととしている。問題は、最低保障年金が支給されない層はどのような所得水準なのか、あるいは最低保障年金7万円が減額され始める所得水準はいくらなのか、そして、最低保障年金の実現のためにはどれくらいの財源が必要になるのか、そうした具体
的な数値を試算した資料が、昨年5月に民主党の社会保障改革調査会役員会の場で提示されたのだが、あまりにも問題が多く、全体の場での論議がなされないまま、昨年の社会保障・税一体改革の場では具体化されずに持ち越されていたものである。
>□最低保障年金7万円、実現は40年後という事実
> 問題の始まりは、社会保障制度調査会事務局長である長妻元厚生労働大臣が、来年度(2013年度)の通常国会にこの民主党の年金一元化法案を提示していくという方針をうち出し、前原政調会長も同意され、それを受けて政権全体の方針になってきたところから始まる。つまり、この一元化についての党内論議はほとんどなされておらず、内閣の中でも2年前、古川国家戦略局長時代に7項目の論点整理しか整理されず、一元化の具体化にまでは着手していなかったのだ。それだけに、この一元化についての試算の中身が初めて出てきて、その内容が、増税して制度を変えても、今よりも支給される年金額が低くなる層が出る事例が多くなる事実に驚き、党
側としても安易に資料として提出することに二の足を踏み始めたように思われる。問題は、すでに出回り始めた試算の中味を国民が見たとき、消費税の引き上げが必要になるにもかかわらず、最低保障年金がもらえなくなる層が出てくることであり、そのもらえなくなる層を少なくしようとすれば、必要となる消費税率のアップは巨額なものにならざるを得ない。そして、もともと完全一元化が目指そうとした本来の目的である「国民年金が払えなくなる人たちを救える」のは、この制度が導入されて40年後でしかなく、これでは国民に対して約束した事が事実上絵に描いた餅に近いものになってしまうのである。
>□自営業者の方たちと雇用労働者の違いを無視できないのでは
> それと同時に、国民年金制度の該当者である自営業者や弁護士や税理士などの士業関係者さらには農家の方たちにとって、これまでの国民年金は、保険料が定額(今時点では月額約1万5千円強)であり、40年間満額保険料を払い続け65歳から月額6万6千円の定額の年金を受け取れるのだが、新しい一元化では15%の所得比例保険料率に代わり、しかも事業主負担がないだけに,もろに所得にかかってくる。1000万円の所得の人の場合、年間これまでの国民年金では、年間約18万円から、民主党案による新しい年金制度では一気に150万円の保険料を納付することになる。もちろん、将来の年金は増えてくるのだが、自分で退職年齢を選択でき
る職業の方たちと、被用者のように定年が定められているものとを同一の保険制度に組み入れることの困難性が出てくるのだ。言うまでもなく、サラリーマン層と自営業や農業の方たちの所得捕捉較差である「クロヨン」や「トーゴ─サンピン」については、依然として完全には解消されていない。
>□年金制度のしっかりとした理解を進めるべきではないか
> そうした中で、この制度に対して国民が本当に期待を寄せるものになるのかどうか、まことに疑わしい。ぜひとも、民主党の側で、しっかりとした論議を進め、本当にこの制度に対する確信を持てるのかどうか、ぜひとも真剣な論議を進めたうえで、与野党協議に提出して欲しいと思う。すでに公明党は、民主党案に対する鋭い反論を準備しており、たとえ与野党協議に入れたとしても、相当厳しいやり取りになることを覚悟する必要がある。政権を本気で倒そうとしているだけに、甘い期待を抱くことはできない。もちろん、この問題について民主党側はややトーンダウンし始め、年金改革についての試算を提出するかどうかもあいまいになりつつあるのだが
、どうしても野党側の攻撃の焦点として年金問題は避けて通れそうにない。しっかりとした理論武装を進めるとともに、党内でも年金制度についての原点に立ち返った論議を進めておく必要があると思われる。その際、小生が最近大変参考になった著作として、朝日新聞の記者である太田啓之さんの書かれた『今知らないと絶対損する 年金50問50答』(文春新書2011年刊)を挙げたい。民主党の若い議員の皆さんは制度論についての勉強する機会が少なく、ぜひともこの機会に制度をよく理解して論戦に対応してほしいものだ。良く考えられた制度ほど長続きをする、ということを知ってほしいと思う。
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>峰崎直樹プロフィール
>1944年10月14日生
>1992年参議院北海道選挙区初当選
>〜2010年 参議院議員3期18年任期満了
>2009年財務副大臣
>現在
>内閣官房参与
>◎峰崎直樹 官邸お庭番日誌
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